2009年9月16日水曜日

せまくなったストライクゾーン

湯浅 誠 著 : どんとこい貧困 208ページから

社会の器、”溜め”が小さければ、
「そんなやり方は受け止められない」と言って、
その人は排除される。
そして社会の器、”溜め”がどんどん減っていけば、
どんどん多くの人たちが
「そんなやり方は受け止められない」と言われて、
排除されるようになっていくだろう。

いまは許されているものも、いずれは許されなくなっていく。
いまのあなたのやり方や振る舞いも、
いずれは許されなくなっていくかもしれない。
ストライクゾーンがどんどん狭くなっていけば、
いままでストライクだった球もボールになってしまう。
それと同じだ。

社会の器に受け止められなかった人たち、
ボールとされてしまった人たちは、
あんたが悪かったんだと言われて、
見捨てられていく。
(引用終わり)


社会の側に、受け止める力がなくなってきているように感じる
人々を、社会が受け止めるべき人と、受け止めようとしない人に
分ける傾向がより強くなってきている

そのときにつかわれることばが「自立」であったり、「自己責任」だったりする。

受け止めきれなくなってきた人の受け皿を用意することなく

ストライクゾーンの外へと排除され、「自立」が促されている
なげかわしいです

2009年9月15日火曜日

やりがいの搾取

「医療崩壊」の産婦人科に希望の光…学会の新規会員数が増加http://sankei.jp.msn.com/life/body/090914/bdy0909142356001-n1.htm

だそうだ

今年の産科婦人科学会の新規会員数が増加したという記事。このこと自体は、素直に喜びたい。
産婦人科医が減少しつつあるといういま、あえて産婦人科医を選んでくれた新人医師にはその期待を裏切らないようにしたい
しかし、「希望の光」とまでいえるだろうか。それは、産婦人科の崩壊の原因は、新人医師が減ってきていることではないからだ
学会は、「政治的」な意味で、産婦人科医療に改善傾向があると宣伝したい、そういう意図があるのだろう
まあ、麻生政権が、「景気は底を打った」と選挙前に喧伝していたのとたいした違いはない


産婦人科が崩壊してきている、その主たる原因は、新人産婦人科医が減ってきたことではなく、中堅の医師が、現場から離れざるを得ない状況に追い込まれていることだ
学会は、「やりがい」を喧伝して、新人の開拓にいそしんでいる。「やりがい」は確かにある。これはまぎれもないことだ。ただし、同時に、他科と比較して圧倒的に多い当直やオンコール。
「やりがい」ということばでは補うことのできない過酷な現場、それがいまの産婦人科医療だ。

ほんとうにこの国の産婦人科医療を支えていくのであれば、新人のリクルートよりも、中堅の医師に対するサポートが喫緊の課題だ。
根深く産婦人科医療の中にしみこんでいる、自分の過重労働を「自慢」するような、旧来の悪しき慣習をすみやかにあらためてほしい

新人医師は、「やりがい」を糧にして、過重労働をよろこんでひきうけるだろう
週に何回も当直をしても、「やりがい」ということばで、納得するだろう
しかし、「やりがい」があるから、「まともな」生活は犠牲になってよいのか。
これこそ、本田由紀氏のいう「やりがいの搾取」ではないのか

「やりがい」だけで、この過酷な労働を続けられるのは、10年がせいぜいであろう
今年の新人産婦人科医師が、10年後にもいきいきと働き続けられるように、
産婦人科医療が立ち直るためには、「まともな」仕事、として、産婦人科医療が
変革する必要がある

2009年9月7日月曜日

「おりこみ済み」の世の中

「おりこみずみ」
おもに、株式相場に用いられることばである
ネットで意味を引いてみると

計画や予算などに、ある事柄や条件などを検討のうえすでに取り入れてあること

とある。

昨日、お台場のビッグサイトまでシンポジウムを聞きに行ってきた
シンポジウムの題名は「自殺のない生き心地の良い社会をめざして」
10日のWHO自殺予防デーを前にして、NPO法人ライフリンクが主催して行っているシンポジウム

「おりこみずみ」は、そのシンポジウムで、シンポジストの姜尚中の発言
姜尚中氏は、シンポジウムのはじめから、なにか怒っているようであった
先日の衆議院選の開票日。テレビの番組で竹中平蔵氏と同席し、竹中氏は、わかっていない、と、憤慨されていた
自殺が毎年3万人を超えているこの日本の状況は異常だ、
との指摘に対して、
「なんで、こんなに経済がわるいときに、自殺の話なんかするんだ」
という印象を受けた
という

姜尚中氏は、
この日本で、毎年3万人が自殺していくことは、もう「おりこみずみ」になっているんだ
という

衝撃をうけた
人が亡くなることが「おりこみずみ」になっている世の中になってきていることに

「おりこみずみ」だからこそ、何の対策もしてこない
「おりこみずみ」だから、経済や政治の方が、自殺でなくなる「いのち」よりも優先される

いつからこんな世の中になったのか
交通事故での死者数は毎年1万人から、いまは、5千人程度に半減している

その一方、自殺でなくなる数は毎年2万人から、3万人へ増加して、すでに10年以上経つ
減少傾向は全く見られない

一年間に3万人、ということは、毎日90~100人が、この日本のどこかで自分でいのちを絶っている
この自殺者の多さは、世界的に見ても2番目。一位はハンガリー。上位には東欧の諸国がならんでいる
日本は、先進国と自称してきたのではないのか?
GDP世界2位を誇っていたのではないのか?

世界2位の国が自殺者で上位に位置していることを何とも思わないのか?

思わないのだ
「おりこみずみ」だから

この日本をどうにか変えていきたい
いまのこどもたちが笑顔で暮らせる日を約束するために

2009年9月2日水曜日

上を見上げてるあいだに・・・

先週静岡からの帰り道、新横浜の先、品川の手前で、にょきにょきとした巨大ビル群が出現。しばらく新幹線に乗っていなかったので??
そうか、武蔵小杉の高層ビル群か
みると、住居用とおぼしき高層マンションや外資系のホテルらしき看板がみえる

川崎市はほとんど平野なので、このビル群だけが天をついてたっている感じ

こんなに、住居をつくって、学校や病院、保育園なんかは大丈夫なのかなあって感じた

きっと、世界金融危機以前に計画されたんだろうなあ、って思う
ちょっと、いまの経済の沈滞ムードからは、あまりにも浮いている景色

そういえば今朝の朝刊。ほとんどが選挙の総括記事と政権交代へ向けての記事
そのなかに、小さく、百貨店8月も苦戦、という記事がでている
まだまだ景気は悪化のほうに向かってベクトルが向いているんじゃないのか

品川の新幹線脇、まえには何にもなかった品川駅の東口側、ここにも高層ビルが林立
林、というより、巨人が肩を並べてたっているような威圧感さえ感じる

いまの、日本にこんな建築物が必要だったんだろうか?
なにか、たいせつなものをみることはしないで、ほんとうに支えがひつようなところには目をふさいで、上へ上へと目をむけていたんじゃあないのか?
「トリクルダウン」。噴水のように上へ向かって吹き上がれば、そのうち、上から下へとしたたり落ちてくる
なにかが、落ちてくるのを待って、上を見上げているあいだに、あしもとはぐずぐずと崩れていっている

いまこそ、しっかりと視線の方向をかえなくてはいけない
そんな気持ちになった

2009年9月1日火曜日

医療の本当の姿をみてほしい

さて、政権交代だ

新政権に期待したいことのひとつが「医療崩壊」といわれている現状への対応だ
各地で、病院の診療休止・診療縮小が相次いでいる

毎年、2200億円の社会保障費の抑制、そして、政府の医師不足への対応不備、がやり玉に挙げられている

新政権は、この社会保障費抑制政策の撤回、医師養成数の増加、を政策にあげている
この政策自体で、「医療崩壊」の速度は多少はゆるむだろう
しかし、根本的な対策か?と聞かれると、胸をはって、そうだ、大丈夫、といっていい気がしない

いったい、どうして医療がここまできてしまったのか?
お金の投入が足りなかったのか、働く医師が減ってしまったためか?

ほんとうの、大切なデータが、開示されていない気がする
それは、医療費がどのような構造になっているかだ

レセプトのオンライン化がおこなわれれば、医療費はもっと透明になる、と、レセプトのオンライン化が進められているが、コンピュータをつかってデータ解析すれば、改善できる、なんて、安易に思っているのではないのか

日本全国でおこなわれている、医療へのIT導入。たとえば、電子カルテ、たとえば、レントゲン写真のデジタル化
ほんとうにこれらのIT化で、効率が上がったのか?
「効率」はあがる、というだろう。それは、「効率が上がる」ように恣意的につくられた指標でもって、IT化の成果を表すからだ

医師は端末に向かう時間が長くなり、患者さんに向かう時間が短くなった
医療は、いったいなんのためにあるのか、誰のためにあるのか
そんな当たり前のことが、どこかに消えていってしまっている

官僚がつくってくる資料や指標をうたがってかかって、ほんとうの、「生の」医療の現状を新政権には見てほしい

自民党政権ではできなかったことを、民主党政権に望みたい

新学期のはじめにあたって

地域によってけっこうまちまちみたいですが、長女の小学校、きょうから新学期がスタートです
新型インフルエンザの対策のために、今朝は検温してから連絡帳に記載して登校
インフルエンザで欠席者が複数いた場合には、学級閉鎖もしくは学年閉鎖になるらしい
いまのところ学校から連絡がないので、 今日はとりあえず大丈夫だったのだろう

さて、新型インフルエンザ
頼みのワクチンもまだできあがっていない様子
そのうえ、国内で作れるワクチンは数が足りないらしい。そのぶん、国外から輸入するという
薬害の防止のために輸入ワクチンについては、できるなら治験をおこなってからにしたいという
ただ、ただ、時間が限られるので100例程度にするらしい
100例程度の治験で足りるのだろうか

特定の疾患にたいする薬であれば、ある程度、その薬の対象となるひとたちの条件は絞れるけれど、インフルエンザワクチンの対象は、子どもからお年寄りまで、すでに持病を抱えている人もいれば、薬を飲んでいる人もいる
どんなふうに100例を選ぶのだろう
とりあえず治験を「やりました」という、アリバイ作りにならないような進め方ができるといいのだが

昨日おとといの台風が過ぎ去って、今日は青空。
そんななかすこしずつ秋が近づいてきている

こどもたちに、しっかり手洗いとうがいの励行を今日もつたえる父であった