2009年9月15日火曜日

やりがいの搾取

「医療崩壊」の産婦人科に希望の光…学会の新規会員数が増加http://sankei.jp.msn.com/life/body/090914/bdy0909142356001-n1.htm

だそうだ

今年の産科婦人科学会の新規会員数が増加したという記事。このこと自体は、素直に喜びたい。
産婦人科医が減少しつつあるといういま、あえて産婦人科医を選んでくれた新人医師にはその期待を裏切らないようにしたい
しかし、「希望の光」とまでいえるだろうか。それは、産婦人科の崩壊の原因は、新人医師が減ってきていることではないからだ
学会は、「政治的」な意味で、産婦人科医療に改善傾向があると宣伝したい、そういう意図があるのだろう
まあ、麻生政権が、「景気は底を打った」と選挙前に喧伝していたのとたいした違いはない


産婦人科が崩壊してきている、その主たる原因は、新人産婦人科医が減ってきたことではなく、中堅の医師が、現場から離れざるを得ない状況に追い込まれていることだ
学会は、「やりがい」を喧伝して、新人の開拓にいそしんでいる。「やりがい」は確かにある。これはまぎれもないことだ。ただし、同時に、他科と比較して圧倒的に多い当直やオンコール。
「やりがい」ということばでは補うことのできない過酷な現場、それがいまの産婦人科医療だ。

ほんとうにこの国の産婦人科医療を支えていくのであれば、新人のリクルートよりも、中堅の医師に対するサポートが喫緊の課題だ。
根深く産婦人科医療の中にしみこんでいる、自分の過重労働を「自慢」するような、旧来の悪しき慣習をすみやかにあらためてほしい

新人医師は、「やりがい」を糧にして、過重労働をよろこんでひきうけるだろう
週に何回も当直をしても、「やりがい」ということばで、納得するだろう
しかし、「やりがい」があるから、「まともな」生活は犠牲になってよいのか。
これこそ、本田由紀氏のいう「やりがいの搾取」ではないのか

「やりがい」だけで、この過酷な労働を続けられるのは、10年がせいぜいであろう
今年の新人産婦人科医師が、10年後にもいきいきと働き続けられるように、
産婦人科医療が立ち直るためには、「まともな」仕事、として、産婦人科医療が
変革する必要がある

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